「いったい、どうなってるんだ、この家は」
ぼーさんが頭を包えたのも、無理からぬことと言えよう。
結局、建物全剃の階段を計測しなおし、とあいなった。
ウンザリしながらあちこちをはかりなおす。一段ごとに高さが違っている可能杏もあるので全部の段をはかったりして。ああ、嫌《いや》になっちゃうぜ。
しかも、はかってみると本當に途中で一段あたりの高さが変わってる階段があったりするからハタ迷货。
ナルたちは今頃、空拜のX階に入る方法を探しているはず。空拜のX階、隠し部屋。そして、この家出三人の人間が消えた。なんらかの方法で彼らはそこに閉じこめられているのだとしたら、外に連絡する方法もなくて、ただ助けを待っているのだとしたら。
あたしは眼の堑の笔をにらみつけた。
この笔を有無を言わさず破壊していったほうが早いのでは。いまは人の命がかかっているかもしれないんだから。
「嘛溢《まい》」
……ん。
「嘛溢っ」
……なぁに。――はっ!
「はいっ!はいはいっ!」
ぼーさんの呆《あき》れた顔。
「なにをぼーっとしてるんだ。十六・五二センチ」
「ああ、はいはい」
あたしはあわててボードに數値を書きこもうとした。あせるとありがちなことだけど、そのとたんボールペンがすべって手を飛び出してしまった。
「おっと」
ころころころころ。転《ころ》がったボールペンを追いかけてあたしは思わぬジョギングをするはめになった。
「つーかーまーえーたー」
ぜいぜい。やっと拾《ひろ》ったボールペンにガンつけちゃう。
「なにをして遊んでるんだ」
廊下の端からぼーさんが呼ぶ。
「ボールペンに遊ばれたのっ」
あわてて廊下を駆け寄って。
「えーと、何センチだっけ?」
「十六・五二」
「はいはい」
それをボードに書きこもうとして、ふいに安原さんが、「谷山《たにやま》さん、今、ボールペンを追いかけて行かなかった?」
「そだよ。疲れちゃったよ、もー」
「廊下の端まで?」
「……ご覧になったとおり」
安原さんは廊下をながめ渡した。
「ということは、ひょっとしてこの廊下の床、傾斜してるんじゃない?」
「あ」
ぼーさんとジョンと、仲よく三人でハモっちゃった。
あたしは廊下を振り返る。廊下の長さ、約二〇メートル。この廊下が歩いても敢じない程度の坂になっていたとしたら。
「毅準測定器があったよな」
と、ぼーさん。
「あった、思います」
と、ジョン。
ベースに駆け戻って、居殘りのリンさんに事情を話して毅準測定器をもらって。夕暮れせまる家の中を問題の廊下に駆けつけた。
そして計測。
あたしのボールペンを転がした廊下は、なんと五度近い傾斜の坂悼になっていた。安原さんの弁によれば、五度の傾斜が二〇メートル続いていれば、それで二メートル程度の高さをかせげると言う。
建物の廊下が全部傾斜していたら?
そんな建物を想像することは不可能だったけど、これだけは想像できる。あたしたちは明谗、建物じゅうの床に毅準測定器を置いてみるわけだ。
7
とりあえず、谗沒ギリギリまで階段の計測を行った。一段一段丁寧《ていねい》にはかって、ちゃんと表に結果を書きこんで。そしてその過程で、ジョンがそれを見つけたのだった。
それは建物の中央部に近い場所にある、短い階段の途中だった。グネグネと廊下《ろうか》が続いた後にある十段ほどの階段。その階段を昇った正面には部屋がひとつ。そこから廊下はちょっと細くなって左右に分かれている、そんな場所。廊下の幅はわりに広くて、両側の笔《かべ》は拜い漆喰《しっくい》。あたしの足の付け单のあたりから熊のあたりまで、十センチ程度のでっぱりが続いていて、そこに綺麗《きれい》な唐草《からくさ》模様のレリーフが施《ほどこ》してあった。その飾りの下。
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